「海外で働きたい!」と思い至ったのはいいものの、具体的にどこから手を付ければいいのか、そのために何が必要なのか、そもそも海外で働くための条件などは満たしているのか、等々……分からないことだらけで不安だったりしませんか?
ひとくちに「海外有給インターンシップ」といっても、始めるには色んな方法がありますし、必要な条件や申請も、国や職種によって異なります。
そこで、私自身の海外リゾートバイトの経験から、どういった手続きや申請が必要だったか、どのようなことに注意するべきかなどを書き出してみました。今後海外での就労やリゾートバイト、ホテルインターンシップを検討している人たちにとって、参考になれば幸いです。
海外有給インターンの具体的な流れ
適切なエージェントを探す
突然ですが、これから渡航しようとしている国のことを思い浮かべてください。
その国で働くために必要な情報を、あなたは今、どれくらい知っているでしょうか?
国の通貨は? 日本円とのレートは?
それをお得に交換する方法はどうでしょう?
日本とワーホリ協定は結んでいますか? 学生ビザや旅行ビザでも働けるでしょうか?
……こういったことをつぶさに調べていかなければ、と思うと、気が滅入ってしまいますよね。
これらの諸々の事情に精通し、あなたにとっての最適解を教えてくれるのが「(留学)エージェント」です。留学、と名がつくこともありますが、留学生のみならず、ワーホリや海外での就労を希望する渡航者向けのサービスを行っているところも多くあります。
エージェントによって、取り扱っているサービスは異なります。
各国の様々な語学学校と提携し、利用者一人ひとりのニーズに合った学校を紹介しているエージェントもあれば、サービスの対象を1ヵ国に絞る代わりに、資格申請の代行から日本人渡航者向けの情報誌の発行まで、手広く取り扱っているエージェントもあります。
私の場合は、友人からの口コミもあり、「有給ホテルインターンシップ」と呼ばれるプログラムを提供しているエージェントに相談に行きました。
有給ホテルインターンシップについて
留学エージェントの中には、現地の企業と提携して、留学生に「有給ホテルインターンシップ」を斡旋しているところがあります。
「有給ホテルインターンシップ」とは、リゾートホテル等に赴いて、実際の職員と同じようなシフト・契約内容で一定期間仕事をするプログラムです。パートタイムで働くアルバイトとは異なり、週の労働時間や基本給が法律で定められているため、ほぼ固定給のような扱いになります。
エージェントも、「有給インターンシップ=海外リゾートバイト」という扱いで取り扱っていたりするので、エージェントを見つける際の参考にしてみてください。
エージェントと相談する
とにもかくにも先ずは連絡を取って、話を聞きましょう。
海外リゾートバイトを検討していること、その動機、自身の英語力、予算、どういった手続きが必要か、どのような職種があるか、等々。
なお、事前知識もなしにまっさらな状態で突撃するよりも、自身である程度の下調べをした上で、その内容とのすり合わせを行うようにして質問する方が、当然イメージも掴みやすくなります。
面談&英語力チェック
エージェントに相談した上で、「やっぱり海外リゾートバイトに挑戦したい!」となった場合に、待ち構えているのが面談と英語力チェックです。
向こうも斡旋先のリゾートホテルとの信頼関係があるので、素性の知れない人間や、英語力に不安のある人材を簡単に紹介するわけにはいきません。
面談に関しては、動機や予算、これまでの職歴や英語歴などについて伝えたりする他、身分証明(パスポートや運転免許証など)や、英語力の証明となるもの(TOEIC公式スコア、語学学校の成績表など)を、必要に応じて提出します。
英語力チェックは、英語で行うプチ面接のようなものです。
私の場合は、エージェントの方から「弊社の担当のものと英語力チェックを行うので、○日の△時に来社してください」と、通常の相談とは別途に呼び出されました。
時間としては10分もかからず、『海外リゾートバイトの志望動機』『職歴や学歴、大学での専攻』『自己アピール』など、日本の就活さながらの内容を英語でやりとりしました。
文法や発音の正しさよりも、「問われていることを理解できているか」「とっさの受け答えに、詰まらずスムーズに対応できるか」を重視されていたように思います。YES/NOだけで会話を終わらせず、不自然な間を空けたりせず、多少不完全な文章でも流暢に意思疎通ができることを示す必要があります。
万が一「十分な英語力が備わっていない」などの理由で落とされてしまっても、気落ちせずに。少し期間を開けたり、エージェントが紹介する語学学校に通ったりすることで、再度挑戦が可能になります。
就労に際しての希望を伝える
はれて面談に合格したら、そこから「こちらが就労先に希望する条件」についてのお話が始まります。
内容は、基本的に以下の3通り。
- 職種について
- 居住環境について
- 雇用条件に付いて
真っ先に聞かれるのが、「希望する職種はあるか?」ということ。
基本的には、キッチンハンドとハウスキーピング(ホテルの客室清掃等)の2種類は、だいたいどの時期も人手が足りていないので募集がかかることも多いそうです。
十分な英語力に加えて接客の経験などがあれば、ホテルのフロントやレストランのホールスタッフなどを希望することも可能な場合もあるのだとか。
次に居住環境についてですが、正直な話、これが一番重要です。
海外リゾートバイトということで、基本的には斡旋先が提供する社員寮のような住居に住み込みで働くことになります。この時、希望条件をちゃんと伝えていないと、大変なことに。
例えば、
- 最高気温が40度を超えるような常夏のリゾートで、エアコンなしで生活できますか?
- インターネットや携帯の電波がほとんど入らないような僻地でも、半年間楽しく過ごせますか?
- 女性専用の居住区があるか、どこまで男女別で区切られているのか心配じゃありませんか?
……などなど。
希望を伝えるばかりではなく、ある程度は妥協して、絶対に譲れないポイントを見極めるのが肝要です。
私の場合は、とにかく暑いのが苦手なので、部屋にエアコンや空調が備わっているかどうかを徹底して確認してほしい、と希望しました。
最後に就労条件についてですが、これに関してはこちらから希望を出すことは難しいと思ってください。
シフトは、朝~昼型と夕~夜型のどちらがいいか、聞くだけは聞いてもらえました。笑
「○時から出勤したい」「遅くても△時には上がりたい」「×曜日は絶対休みにしてほしい」などの希望を伝えても、「実際に斡旋先が決まってから、直接交渉してください」の一点張り。
時給についても、「最低時給が保障されているだけありがたいですよね」的なことをやんわりと言われ、交渉の余地はナシ。
エージェントとしては、利用者からの希望条件を無駄に増やすほど、その希望に沿った斡旋先を持ってくるのも困難になってしまうのでしょうし、当然と言えば当然のことなのかもしれません。
就労先が決まるまで
希望条件を伝えてからは、斡旋先が決まるまでの準備期間に入ります。
斡旋先は、早ければ一週間程度でも見つかるし、遅ければ数カ月かかってしまうとのこと。「そんなにバラつきがあるものか?」とも思ったのですが、例えば年末年始などの繁忙期・イベントシーズンは臨時で職員を募集する場所も多く、斡旋先が見つかりやすいのだそうです。反対に、仕事が落ち着いてくる閑散期は、募集がなかなか出ないのだとか。
さて、この準備期間にしなければいけないことは二つ。『英文履歴書の作成』と、『面接対策』です。
英文履歴書の作成
斡旋先に提出する用の英文履歴書を作成します。
日本の履歴書との大きな違いは、「基本的にワードで作成すること」「箇条書きでコンパクトにまとめること」の二点でしょうか。手書きで、正しい言葉遣いで、出来るだけ空白を埋めて……みたいな文化は、英語圏ではほとんどありません。
インターネットで調べればフォーマットがいくつも散見できます。完成したら、何度かエージェントに添削などしてもらいます。
面接対策
英文履歴書の作成と並行して、斡旋先との面接に備えます。
エージェントがよく聞かれる質問集を用意してくれたり、面接の練習などを請け負ったりもしてくれる場合もありますが、基本的には自分で対策しなくてはなりません。
参考までに、私が実際に面接で聞かれた内容を、憶えている限りで書き綴ってみます。
- 自己紹介を1分ほどでお願いします。
- 自身の来歴について、簡単にまとめて教えてください。
- あなたが働くことになる○○というリゾート地や、私たちの職場について、知っている限りを英語で伝えてください。
- キッチンハンドとはどのような仕事か、知っている限りを英語で教えてください。
- キッチンハンドという仕事において、もっとも大切なことは何だと思いますか?
- 煙草やお酒は嗜みますか? 頻度はどれくらい?
- アレルギーや常備薬、特筆すべき既往歴はありますか?
慣れない英語での面接は緊張するかと思いますが、普段の英会話の延長と思って頑張りましょう。
面接から仕事開始まで
面接当日
斡旋先の候補が見つかると、すぐにエージェントから面接の日程調整の連絡が来ます。
面接は、基本的に電話で行われるようです。相手の表情や口元が見えず、電子音声が聞き取りにくかったり、電波が悪くて途切れたりするので、面と向かっての会話よりも難度は高いかもしれません。臆さず、うまく聞き取れなかった時は「電波が悪くて聞き取りにくい」「もう少しはっきり発音してほしい」など伝えましょう。
同じエージェントを利用した知人数名にも確認しましたが、面接は基本的に一次のみで、10~15分で終了といった簡単なものが多いようでした。また万が一落ちても、また別の斡旋先を探してもらえるとのことでした。あまり気負いすぎずに行きましょう。
配属までの準備
合格の通知とともに、仕事開始日を指定されるので、航空機の手配や必要な物資の購入などを行います。
職場によっては、肌着や靴・靴下の色や種類に指定があったり、住み込み先はあるものの寝具などは自分で用意する必要があったりするので、様々な物入りが発生します。
仕事開始まで
必要な手続きや準備をすべて完了して、リゾートへと向かいます。正規職員の方から、職場や住居、周辺施設などの案内を受けた後、同日採用となった他の職員たちと共に、合同でオリエンテーションを受けます。
だいたい1~3日ほどの期間をオリエンテーションに費やしてからは、即現場に配属!……とはいえ、最初のうちは先輩に付いて回って仕事を教えてもらう、というのが基本になるのでご安心を。
といった感じで、エージェントに連絡をしてから実際の仕事に配属されるまでの流れをまとめてみました。
繰り返しになりますが、あくまで一例です。国や就業形態によって多少のバラつきはあることをご承知おきください。
海外有給インターンを始めるために必要なもの
英語力はどれくらい必要なのか?
海外有給インターンを始めるに際して、ここが気になっている方も多いかと思われます。
職場は多国籍の英語環境、日本語も全く通じない訳ですから、仕事の指示を理解したり、意思表示をしたりするためにも、英語力は必要不可欠。
私の場合、エージェントから面談の際に「あくまで基準として」と提示された英語力は以下の通りでした。
- TOEIC公式スコア: 600以上
- 語学学校のクラス: Upper-Intermediate以上
TOEICについてはおなじみですね。
語学学校のクラスについてですが、海外留学・ワーホリなどで渡航して語学学校に通う場合、その英語力に応じてクラス配属が行われるので、これを基準に英語力を判断されることが非常に多いです。
等級分けは学校によってまちまちですが、だいたいが以下のような感じになります。
Elementary(初等)<Beginner(初級)<Pre-Intermediate(準中級)<Intermediate(中級)<Upper-Intermediate(中上級)<Advanced(上級)
Elementaryは本当に英語を知らない小学生レベルですね。日本の義務教育で文法や語彙をしっかりと学んだ人であれば、Intermediate前後でしょう。英語が得意教科で、大学でも英語を専攻したレベルであればUpper-Intermediateくらいだと思います。Advancedは、現地の人でもパッと出てこないような難しい語彙や、ネイティヴ並みの受け答えなどを学んだりするので、実用的な英語力というのであればUpper-Intermediateくらいあれば十分なのだろうと思います。
……ただ、実際に働いた経験からですが、TOEIC600/Upper-Intermediateの英語力では、はっきりいって全く足りませんでした。おそらく、これは最低限のボーダーラインということなのでしょう。
どちらかというと、TOEICや語学学校での成績よりも、「日頃から海外のドラマやYouTubeを英語で聞き流しているので、英語の音に慣れている」とか、「その業界でアルバイトをしていたことがあるので素地がある」といった経験値の方が、英語ネイティブとの意思疎通には役立ったように思います。
海外で働くために必要な申請・手続きは?
また、英語力は本人の努力次第としても、「海外で働く」ために必要な申請や条件を見たいしているかの確認も必要となります。
再三になりますが、国と就業形態によって必要なものは変わります。エージェントとしっかり確認し合いましょう。
参考までに、私自身が就労に際して必要であるとエージェントから言われたものを、思い出せる限り書き連ねてみました。
- 手数料などの諸経費
- ワーキングホリデービザなどの就労を認めるビザ
- 身分証明書(国際運転免許証など、パスポート以外にも海外で使えるものが複数あると便利)
- クレジットカード(エージェントへの手数料支払いに現金決済ができなかったため)
- 現地の銀行口座の開設(給与支払いのため。エージェントが申請を代行)
- メールアドレス(GメールなどのフリーメールでOK)
- 電話番号(現地の携帯キャリアと契約して連絡手段をゲットする必要あり)
- LINE、Skypeなどのアプリ(エージェントとの連絡に必要)
手数料などの諸経費について
留学エージェントは基本無料で利用できるところが多いのですが、有給インターンシップに限って言えば、仲介料という形で手数料を払わなければいけないことがあります。
私の場合は、日本円で10万円ほどが飛んでいきました。『ぼったくりでは……?』という思いも頭をよぎったのですが、同エージェントを利用している友人から「仲介自体はちゃんと面倒を見てもらえる」「実際に働き始めたら10万円の損失くらいすぐに取り戻せる」と説得を受けたのもあり、渋々納得して支払うことに。
先述したビザの申請や銀行口座の開設に関しても、申請代金などは必要になってきます。エージェントに、事前におおよその見積もりを聞いておくといいかもしれません。
ビザの残り期間について
それからもう一点。特にあなたが、ワーキングホリデーを活用しての海外リゾートバイトを検討している場合、注意してほしい点があります。
それは、ビザの残存期間。どれくらいその国に滞在できるか、の残り日数について。
例えばあなたが経営者だとして、「ちょっと旅行費稼ぎたいから、2~3週間だけ働こうかな~」などと言っているカタコトの海外留学生、雇いたいとは思わないですよね。
たとえ方便でも、「出来る限り長く働きたいと思っている」という方が雇い主からのウケもいいのです。その意志を見せるために、ワーホリビザなどの残り日数は重要だとのこと。最初に観光や語学留学を堪能して、残り3ヵ月くらいになってから「さぁそろそろ働き始めるかー」なんてエージェントに応募しても、どこも雇ってくれないのです。
例として、オーストラリアのワーキングホリデーでは、ひとつの職場で働ける最長の期間が「6ヵ月」であるため、この「6ヵ月」を基準として、それ以上の滞在期間が残っている渡航者にのみ斡旋を行っていました。これが少しでも満たないと、募集をかけてもどのリゾートホテルも応じてくれないのだとか。同ビザでの渡航を検討している人は、特に余裕をもって期間を設定しましょう。
いかがでしたか? ご自身が海外で働くためのヴィジョンに繋がるような内容はあったでしょうか。
先ずはともかく、エージェントを見つけて詳しい話を聞いてみるところから、海外リゾートバイトの第一歩が始まります。細かな疑問点もひとつずつ潰していって、万全で望みましょう。ご健闘を。